2.24後の世界で 第2回 安倍晋三よ永遠に

 

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2022年2月24日。

この日付は未来の人たちにどう記憶されるのか。プーチンウクライナに軍事侵攻した日から、世界の景色は一変した。虚実入り交じる情報。分断に向かう世界。不安が覆う社会で私たちはどう生きればいいのか。

これまでの経緯を綴っていきたい。

 

安倍晋三が殺害された訃報で国内外を震撼させた。その背後関係や動機については捜査中であるため詳細は定かではないが、改めて振り返って、これまでも日本の首相経験者などが狙われた。

 

戦前にさかのぼるば、初代首相の伊藤博文が1909年、中国ハルピンの駅で民族主義運動家の朝鮮人に銃殺された話はあまりにも有名だ。

 

1932年には、クーデタ(五・一五事件)という特殊な状況下ではあるものの、犬養毅首相が海軍将校らに暗殺された。戦後では、北朝鮮訪問の議員団長を務め、天皇訪中を中心になって進めた金丸信自民党副総裁が1992年に右翼活動家に銃撃された事件(殺人未遂)が起きた。

 

少し毛色の変わったところで、1976年「戦後最大の疑獄」と呼ばれたロッキード事件への関与が噂されていた政界の自宅に右翼活動家が「天誅を下す」と小型セスナ機で「特攻」した事件もある(殺人未遂)。

 

被害者の多くに対しては様々な評価があるにせよ、「怪物」といってよい人物ばかりだった。その一方で、犯人の多くは、合法的な活動に幻滅した挙句、直接的な行為に訴えた者が目立つ。

世界に目を向けて、その思想性にかかわらず、銃規制の緩い米国もこれまで多くの指導者も犠牲になった。

 

一つは、奴隷解放で知られるリンカーンが1865年、家族らと訪れていた劇場で、奴隷制廃止反対論者に銃殺された事件。20世紀に入って、ケネディ(1963)、マルコムX(1965)、キング牧師(1968)などが立て続けに暗殺された。1960年代は、特に暗殺が多かった。

このうち黒人の権利回復運動のリーダーだったマルコムXは、多くの人が集まる集会の会場で、かつての同志3人によって銃殺された。この際に用いられたのがショットガンと呼ばれる銃身の短い散弾銃で、至近距離から21発の銃弾を全身に受けた。

9.11事件以降の安倍晋三の事件で手製の銃が用いられたが、これを拳銃ではなく散弾銃と伝えている報道もある。このショットガンに類したものといえなかった。

 

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紛争の絶えない中東でも指導者の暗殺は頻繁に発生してきた。世界有数の火種とも呼べるパレスティナ問題をめぐっては、皮肉なことに「戦争を続けない」選択をした指導者が、相次いで反対派に暗殺されてきた。

 

1981年、軍事パレードの最中にイスラム過激派「ジハード」に自動小銃で一般市民まで銃殺された。この際、サダトのそばにいた中国、キューバ、イエメンなど外国からの要人11人が巻き添えで殺害された。
1979年、アメリカの仲介によってイスラエルとの間で平和条約を結び、アラブ諸国のなかでいち早くイスラエルとの和平を模索したが、これを「裏切り」とみなす過激派によって暗殺されたのだ。

もう一方の当事者であるイスラエルでも、「アラブとの和解」に向かう指導者は狙われてきた。

 

1993年、パレスティナでの停戦や交渉を約束したオスロ合意を結び、国際的には高く評価されたが、これに反対する過激派によって1995年に暗殺された。こうした暗殺の横行は、イスラエルとアラブの政治家に和平へ向かうリスクを高めさせた。

これらの事件を振り返ると、今回の事件の特異さが浮き彫りになる。暗殺の多くは、政治的なイデオロギーや価値観の違いが大きな原因となってきた。単純な殺人犯というより政治犯と呼ぶほうがふさわしい。

ところが、現行犯で逮捕された容疑者の動機に「政治的な理由ではない」と語り、特定の宗教団体に母親が多額の献金をして家庭生活が破綻し、この団体と安倍晋三が深く結びついていないかと考えたことが動機だった。

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6年前の相模原事件、28年前の地下鉄サリン事件酒鬼薔薇聖斗の事件も疑ってかかる必要もあるため、背後関係については慎重な調査が必要だが、仮にこの供述が事実とすれば、まったくの私怨による犯行ということになる。だとすると、政治的な動機づけに基づく「暗殺」と呼べるかも不明になる。

こうした犯行を防ぐことは通常の暗殺より難しい。一般的に、指導者が暗殺されることを防ぎたいのなら、政治的に敵対している勢力をマークすることは必須だ(それでも暗殺を防げるとは限らないが)。しかし、私怨を募らせて犯行に走る可能性のある者すべてを事前に洗い出しておくことは、ほぼ不可能に近い。

 

今回の日本の警備体制が甘いために今後の警備体制にも再考を迫るもので、今回の事件も2月に起きたロシアの侵攻も世界の暗殺史上に残る。