2.24後の世界で 第5回 呪われたオリンピック 中編
2022年2月24日。
この日付は未来の人たちにどう記憶されるのか。
プーチンがウクライナに軍事侵攻した日から、世界の景色は一変した。虚実入り交じる情報。分断に向かう世界。不安が覆う社会で私たちはどう生きれば良いのか。
これまでの経緯を綴っていきたい。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会元理事の逮捕で発覚した汚職事件で札幌市が目指していた冬季大会招致にも影を落とした。2038年大会も絶望的となり、同市は招致活動を停止する。関係者は「汚職事件が転機になった」と漏らす。
同市はかねてより30年大会の招致を目指しており、市民を対象とした22年3月の意向調査で過半数の支持を得た。国際大会の運営能力に定評があり、一時はソルトレークシティー(米国)などのライバルを抑え、最有力候補との見方もあった。
しかし同年夏以降、汚職事件と組織委元次長らによる談合事件が相次ぎ発覚。それまでも経費増大や新型コロナウイルス禍での開催が不信感を招いていた。
転機は事件。札幌でも再発するんじゃないかとの懸念が市民に広がった。
国際オリンピック委員会(IOC)は候補地選定で地元住民の支持を重視しており、手痛い打撃となった。
札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は22年12月、体制見直しの為、今年10月には市民の理解を得られないとして34年以降の招致に切り替えた。しかし11月、開催候補地を30年にアルベールビル、34年にソルトレークシティー、38年はローザンヌに絞り、札幌市は事実上、招致レースから締め出された。
大会のプラス面を市民にアピールしたかったが、事件の影響でマイナス面の解消に力を注がざるを得なくなり、思い描いていた招致活動ができなくなるからだ