2.24後の世界で 第4回 アンパンマンの精神
2022年2月24日。
この日付は未来の人たちにどう記憶されるのか。プーチンがウクライナに軍事侵攻した日から、世界の景色は一変した。虚実入り交じる情報。分断に向かう世界。不安が覆う社会で私たちはどう生きれば良いのか。
これまでの経緯を綴っていきたい。
人気漫画「アンパンマン」の著者、やなせたかし氏(享年94)が死去した。先の大戦で中国戦線に出征し、復員後、高知新聞や三越宣伝部に勤務。その後、フリーのイラストレーターになり、1973年に絵本の「あんぱんまん」を発表した。この作品が世間にじわじわと浸透し、88年に日本テレビでアニメ「それいけ!アンパンマン」として放映されて爆発的人気を博した。
「アンパンマン」の単行本はこれまでに同社から400冊近い作品を出し、総発行部数も7800万部に上る。
アンパンマンの文具などのグッズは軽く1000点を超える。人気絶頂だった99年当時「アンパンマンの商品は子供を相手に毎年約400億円を売り上げる」と報じた。
「やなせ氏の本の定価も500~2600円。そのうちの10%が印税として彼に支払われいる。通算7800万部だから、印税を100円で計算して78億円。これに使用料が加わり、文具などは2%前後が作者に入る。
年に400億円という、それだけで毎年10億円くらいの収入があった事になる。
3年前のコロナ禍になるまで、アンパンマンを使ったグッズの総売り上げは1兆1000億円と伸びた。著作権使用料を2%で計算した場合で220億円だ。
「これに本の印税78億円とテレビ放映料、歌の作詞印税などを加えると全部で400億円になるでしょう」
大金を手にしたやなせ氏だが、私生活は地味だった。日本漫画家協会の会長を務め、新宿区片町にある自分の持ちビルに協会の事務局を間借りさせているが、家賃は取っていないといわれる。金持ちでありながら、生涯、贅沢(ぜいたく)はしなかった。
「93年に奥さんに先立たれ、子供も親戚もいない。関係者の間では、遺言で誰かを遺産の受取人に指名しているのか、それとも遺言を残さず遺産が国庫に入ることになるのかが話題になる」